抄録
本研究ではボリビア多民族国のラパス首都圏の主要な水源となっているHuayna Potosi West氷河を対象として複数の気温上昇シナリオに対する今後30年間の氷河変動と融解量をシミュレーションした.氷河を標高50m毎に分割して質量収支の計算を行った.初期条件となる氷河の断面形状と氷厚は地形データから推定した.モデル計算の結果,現状の気候が続くと仮定する場合,8年後にほぼ平衡状態に達し,30年後の氷河面積は4%,総融解量は52%減少する.また,気候変動に伴い0.024~0.044℃/年の気温上昇が続くと仮定する場合も氷河は消失せず,30年後の氷河面積は21~44%の減少,総融解量は12%の増加から39%の減少と推定された.現在気候の平衡線高度付近における氷河面積が大きいため,平衡線高度の増加に伴い気温上昇に対する30年間の融解量の不確実性が大きいことも示された.