抄録
地球温暖化に伴う底生動物群集の将来変化を推定するために,源流域において底生動物群集の採集と水温の測定を行った.対象地点を,類似した水深,集水面積を有し,人為影響の限りなく小さい100~850mの標高帯に位置する源流域に設定した.まず,8種類の全球気候モデル(GCM)から得た将来気温(近未来,遠未来)を入力値として,既存の分布型流出・水温モデルにより源流域の水温を計算した.この水温を,源流域において得られた生物・水温データに基づいて構築した単回帰モデルの説明変数として,将来の底生動物群集の個体数密度を推定した.結果として,GCM間の出力値の相違に起因する不確実性を考慮すると,近未来における放射強制力の低いシナリオにおいてカワゲラ目の個体数密度は平均にして64%減少し,高いシナリオにおいては消失する可能性が示された.