2014 年 70 巻 5 号 p. I_53-I_58
循環型社会への取り組みは,工場,産業団地,都市等,様々な階層で行われる必要があるが,近年「産業共生モデル」が注目されている.その理念に基づいて天津市において構想されている「裕川循環経済産業園」の産業共生モデルは,天津市とその周辺の建築廃棄物,下水処理場の汚泥及び火力発電所の石炭灰などの廃棄物を回収して,それぞれモルタル代替,コンクリート発泡剤,肥料代替として再利用する.また,各企業間に共生ネットワークを構築し,火力発電所の余熱を下水処理場と建材製造工場で,下水処理水を火力発電所の冷却水として利用することより,産業団地全体の資源・エネルギー消費の効率向上を図るものである.建築廃棄物,下水処理場からの汚泥の再利用はすでに実施されているが,火力発電所との連携(石炭灰,余熱利用)については計画中である.本研究では,天津市内に立地する裕川循環経済産業園を事例とし,産業共生モデルの環境負荷削減効果の定量評価を行った.天津市における現在の廃棄物処理の実態を参照ケースとし,産業共生モデルの環境負荷削減効果を明らかにした.手法としては,ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いて,モデル構想全体のライフサイクルにおける温室効果ガス排出削減量を評価指標として評価した. 算定の結果はCO2排出量において産業共生ケースの方が環境負荷は小さいことがわかった.