抄録
生物動態を考慮した物質収支モデルにより,諫早湾干拓調整池における窒素・リンの物質収支特性を把握するとともに,流入負荷対策等を行った場合の物質収支を計算し,水質改善手法の方向性を検討した.その結果,調整池の窒素・リンは,流入負荷や底泥からの巻き上げ・溶出による寄与が大きいことがわかった.また,動植物プランクトンを介しての物質移動量が大きい反面,底生生物や魚類への栄養物質の移動量は小さく,これら生物による水質改善の効果は小さいと考えられる.動植物プランクトンの除去や覆砂・巻き上げ対策は水質改善に繋がるが,費用対効果や効果の持続性で課題が多い.一方,調整池への流入負荷量をバイパス放流した場合,調整池の窒素・リンは減少し,水質改善に繋がることが示唆された.