2014 年 70 巻 6 号 p. II_239-II_247
2050年を対象に,世界の鉄鋼部門におけるCO2排出量削減ポテンシャルを推計した.具体的には,CO2排出削減対策として,転炉から電炉への転換を取り上げ,電炉の導入限界を鉄スクラップ発生量の供給側,及び,財別の鉄鋼生産量の需要側から検討し,鉄鋼部門からのCO2排出量の推計を行った.なお,粗鋼生産量の将来推計は,対策なしのBaUケースと様々な対策を導入するCMケースの2ケースについて行った.
その結果,推計対象期間すべてで粗鋼生産量よりも鉄スクラップ発生量の方が少なく,転炉をすべて電炉で転換することは不可能であった.鉄スクラップ回収率を100%としても,BaUケースの2050年のCO2排出量は対2005年比で12%の増加となった.同条件で,CMケースでは32%の削減が達成された.需要側からの制約がある場合の削減ポテンシャルは6%であった(CMケース).