抄録
本研究では,家庭内二次感染を考慮したノロウイルス感染症伝播モデルの構築,対象地域でのモデルシミュレーションの実行,およびそのシミュレーション結果と疫学データの比較を通じた本モデルの有用性を検討した.その結果,流行のピークまでに要する時間は,考察した4種類の不確定性が高いパラメーターのうち,NVを含む食品の摂取期間に敏感に反応することがわかった.加えて,家族構成に応じて,家庭内二次感染リスクは一次感染リスクよりも大きくなることが定量的に示された.特に,総員4人以上で幼児が存在する家庭では家庭内二次感染リスクは一次感染リスクの10倍以上になった.最後に,上記のパラメーターに対するピーク時点の反応を利用し,疫学データとの比較を通じた実際の流行に対するアプローチの一例を示した.