抄録
有明海における溶存酸素濃度(以下DO濃度)の季節的な低下現象は主として夏期に湾奥部で発生している.さらには赤潮発生や密度成層に伴っても短期的かつ局所的に発現することが指摘されている.有明海のDO濃度の低下現象に関する研究は調査期間や対象域が限定的であることから,DO濃度の変動機構を長期的かつ広域的な観点から解明するには,検討課題も残されているようである.本研究は,有限容積モデルを用いて有明海におけるDO濃度の長期的変動機構について現象解明を試みたものである.主な結論として,夏期における1970年代の低DO濃度のレベルは,直近10年間に較べても,より低い傾向であること,原因として,し尿の海洋投棄由来の藻類増殖の影響を指摘した.