2014 年 70 巻 7 号 p. III_483-III_491
面的汚染の浄化と温室効果ガスの削減,資源回収を目的として提案されているクリーニングクロップから乳酸発酵を行うシステムについて,温室効果ガス排出量,窒素の水環境負荷,および,収益性の評価を行った.その結果,温室効果ガス排出量は,クリーニング栽培プロセスでは削減されるが,乳酸発酵を含むシステム全体としては削減量よりも増加量の方が多いことから,温室効果ガス排出量を削減するシステムとして位置づけるには,加温などのプロセスを改善するか,乳酸発酵以外のシステムで利活用する必要があると考えられた.また,ハウス農地においてクリーニングクロップにより除去された窒素負荷の大部分は,乳酸製造工程の廃水として排出されることから,制御困難な面的汚染が制御可能な点源汚染に変換されることとなり,高度処理を介することで水環境への負荷量の削減につながることが明らかとなった.製造原価の評価からは,乳酸発酵の前段階において栄養塩を抽出するシステムが比較有利であり,その損益分岐点は年間105tDW以上,クリーニングクロップの栽培面積に換算すると18ha以上にあることがわかった.