2014 年 70 巻 7 号 p. III_493-III_499
幅広い塩分濃度で増殖でき,かつアンモニア態窒素に対する耐性を有する藻類株を見いだし,藻類培養への消化液の利用性可能性を評価した.藍藻類A,緑藻類B,C,D,珪藻類Eの5株の塩分耐性を試験した結果,0.2‰~30.6‰において藍藻類A株の最大増殖量と脂質生産量は塩分による影響を受けないこと,その比増殖速度は1.4d-1~1.8d-1と高いことがわかった.A株はSynecococcus sp.であり,さらに窒素源をNH4Clとした改変f/2培地を用いてA株のアンモニア耐性を評価した結果,A株はアンモニア態窒素濃度0.9~57.6mMで増殖でき,14.4mMのときに増殖量が最大となった.アンモニア態窒素濃度14.4mMでの最大増殖量はf/2培地使用時よりも高かったが,窒素源としては硝酸態窒素の方が好適であった.下水二次処理水や海水で希釈した消化液において,A株は増殖し,脂質を生産した.しかしながら,消化液にはA株の増殖を低下させる因子が含まれた.下水二次処理水を用いて希釈した消化液での最大増殖量,脂質生産量は海水を用いて希釈した消化液よりも高く,消化液の希釈液としては下水二次処理水の方が好適であった.