抄録
将来の温暖化による水道水源ダム湖の富栄養化と,水道事業への影響および適応策の効果を全国的に評価することを目的として,2つの排出シナリオに基づき,全国の37評価対象ダム湖の年平均表層Chl-α濃度の現在と将来の値を推定した.さらに,対象ダムから取水する54水道事業体を抽出し,取水量などの情報に基づき,ダム湖の水質変化による影響人口を地域別に算出した.その結果,現在から2100年にかけて水源ダム湖のChl-α濃度が増加し,給水人口に占める影響人口の割合が高まるが,影響人口は2050年代にピークを迎え,その後は人口減少の影響により減少することが推定された.水道事業における適応策として,ダム湖に曝気循環施設を導入することで,影響人口と高度浄水処理導入費用を低減できることが示された.