土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境システム研究論文集 第43巻
気候変化による低栄養に起因する健康影響の経済評価
長谷川 知子藤森 真一郎横畠 徳太高橋 潔増井 利彦
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 71 巻 6 号 p. II_23-II_34

詳細
抄録

 健康への影響は気候変化による大きな影響の一つである.本研究では,気候変化がもたらす低栄養に起因する健康負荷を経済的に評価することを目的とする.低栄養に起因する5歳未満の低体重により発症する9種の健康負荷を対象とした.次の2つの経済指標を用いて負荷の大きさを評価した.第一に,疾病による医療サービス費用の増加と死亡により失われる人口および労働力の減少によってもたらされるGDPおよび消費の損失.第二に,失われる生命の経済的価値である.影響評価には世界経済応用一般均衡モデルを用いた.複数の作物モデルと気候モデルによって推計された作物収量を用いることでこれらによる不確実性幅を考慮した.次の結果が得られた.i) 気候変化による低栄養起因の死亡・疾病がもたらす医療費および人口,労働人口の変化を通じたGDPおよび消費への影響は,地域的ばらつきがあるものの,微小である.一方,ii) 低栄養により失われる生命の経済価値は2050年時点で世界全体では-0.4~-+ 0.1%,地域によって-6.0~+ 1.0% のGDP損失に相当する.既往研究で考慮されていなかった低栄養起因の死亡による影響が大きいことが明らかとなった.

著者関連情報
© 2015 公益社団法人 土木学会
前の記事 次の記事
feedback
Top