抄録
わが国では高齢者の健康寿命を促進することが社会的な課題となっている.その一つの方策として,外出しやすい居住環境を形成し,高齢者が日常的に外出する機会を確保することで健康を維持することが考えられる.中山間地域のように外出先が限られる地域では,買い物が貴重な外出の機会であり,他の地域と比べて買い物に着目することの意義が高い.そこで本研究は,介護予防の観点で自治体が実施しているデータを用いて,中山間地域の高齢者を対象に,買い物頻度がどのような側面での健康と関連があるのかについて実証的に分析した.分析の結果,買い物頻度は,閉じこもりや転倒防止などとの関連が認められた.このことから,買い物の機会を維持することが福祉的な効果をもたらしうることが示唆された.