抄録
本研究では,夏季における内部生産の抑制による生物生息環境の保全,冬季におけるリン不足による色落ちが懸念されているノリやワカメをはじめとした生物生産の健全化を目的とした栄養塩管理手法を検討するため,博多湾における栄養塩類負荷量の変動に伴う海域濃度変動の試算を行った.その結果,夏季においては,T-P負荷量の削減により内部生産が抑制され,海域CODの低減に効果がみられた.また,冬季おいては,T-P流入負荷量を1.5倍にすることにより,内部生産由来のCODは増加するが,現状濃度で環境基準値を下回る西部海域や東部海域では環境基準値以下を維持し,ノリ,ワカメ養殖の生育環境改善の効果がみられた.