抄録
有明海湾奥部に流入する感潮河川の河岸にはヨシが繁茂し,流下阻害などの観点から問題視されている.ヨシ繁茂を抑制する手法として貯水トレンチの造成が提案されているが,生態系へ与える影響については不明な点が多い.本研究ではトレンチ内部の生物相を明らかにし,また形状との関係について考察した.その結果,季節を問わずシラタエビを主とする甲殻類(エビ目)が優占する生物相が形成されていることが明らかとなり,夏季にはシモフリシマハゼとアベハゼを主とする魚類(ハゼ科)の優占率も高くなっていた.また,これらの生物相には貯水トレンチの形状による差は見られなかったが,トビハゼやアリアケガニは浅いトレンチと連続した構造に多く,種レベルでの選好性が示唆された.また,ミナミメダカや水生昆虫の生息場を担っていることが示唆された.