抄録
魚類繁殖に関係する有性生殖,成長関連遺伝子群を選出し,メダカを試験魚とする96時間の曝露実験から,活性汚泥処理,微生物保持担体処理での各遺伝子群の発現変動抑制効果の定量的評価を試みた.さらに,遺伝子発現レベルと産卵の関係解明のため,両処理水についてメダカ成魚による産卵実験を行った.その結果,下水試料に曝露された試験魚の有性生殖,成長関連遺伝子群へ及ぼす影響は,曝露区と対照区の試験魚の遺伝子発現強度の違いをユークリッド距離で示すことにより定量的に評価でき,流入下水でみられた有性生殖,成長関連遺伝子群への影響は,活性汚泥処理,後段の微生物保持担体処理により,水生生物の保全に係る水質環境基準の生物A類型の河川レベルまで低減された.産卵実験からは両処理水の産卵への悪影響は認められなかった.