抄録
水再生利用のための土壌浸透処理において下水処理水中の溶存有機物(DOM)の物理化学的性質がウイルス吸着除去性に及ぼす影響を評価した. 具体的にはまず3種類の下水処理水を対象として砂に対するアデノウイルスF群のバッチ式吸着実験を行い, その吸着性を比較した. さらに下水処理水中DOMを疎水性と分子量の違いによって分画し, 各画分の存在下で吸着実験を行うことで, ウイルスの吸着を阻害するDOMの性質を検討した. その結果, 対象とした全ての下水処理水でDOMの存在によりウイルスの吸着性が低下し, 特に疎水性画分と5000 Da以上の高分子画分において大きなウイルスの吸着阻害効果が確認された. これより, 土壌浸透過程でのウイルスの吸着除去特性はDOMの存在だけでなくDOMの特性によっても大きく依存することが明らかとなり, ウイルスの吸着挙動を理解する上では共存DOMの性質も考慮する必要性を示した.