2016 年 72 巻 5 号 p. I_45-I_51
氷河の融解水を水資源として利用するボリビア多民族国は,氷河縮小によって水資源管理の見直しに迫られている.本研究はボリビア国のトゥニ貯水池を対象として,氷河融解・流出モデルを適用して,氷河縮小が流出量に及ぼす影響を解析した.氷河域はLandsat衛星の画像を用いて1987年から2014年の変化を抽出した.その結果,トゥニ貯水池集水域の氷河面積は対象期間に8.7km2から4.9km2に減少,氷河面積の変化に対して年間流出量は約40%減少する.流出量に対する氷河融解水の寄与率は雨季の前半(9月から12月)に集中する.氷河面積の減少によって寄与率は42%から4.5%に減少する.氷河融解による流出量は氷河面積と線形関係にあり,特に消耗域の変動が影響を及ぼすと考察した.