抄録
洪水中や洪水後の水は濁度を含んでいる.多くの魚は遊泳中に目や側線を使っていることから,濁度は魚群の遊泳特性に影響を及ぼす可能性がある.しかしながら,濁度と魚群の遊泳挙動に関する既往の研究は少ない.本研究では,静止流体中での濁度と魚の尾数の変化によるアユ魚群の遊泳挙動をビデオカメラによって記録した.その結果,濁度の増加によって魚群はいくつかの魚群に分裂することが判明した.これは,アユは遊泳中に魚群から離れた個体が濁度による視界の悪化のため,元の魚群に復帰することが困難になったために生じたと考えられる.これに加えて,濁度の増加で視界が悪くなり,個体間距離を減少させている.