抄録
本研究では,微生物燃料電池(MFC)の有機物組成変化による性能への影響調査を目的として,実排水および乳酸と酢酸をそれぞれ単一基質として安定的に運転されているMFCに供給する有機物組成を変更し,COD除去や発電性能,微生物菌相への影響を把握した.その結果,有機酸組成変更によりMFCの性能は影響を受け,酢酸から乳酸へと変更した際に大きい一方で,実排水から酢酸に変更した際は最大電力密度が変更前後で共に約270 mW/m2を発揮し影響が小さかった.また,アノードの菌相解析によりAcetobacterium属がMFCの乳酸分解過程で重要な役割を担っていることが示唆され,乳酸が主体の実排水処理におけるMFCの性能維持や安定化には,発電に寄与する微生物のみならず共生微生物群の保持も重要であることがわかった.