2016 年 72 巻 7 号 p. III_169-III_177
感潮域に位置するフエ旧市街地の運河は,未処理汚水の流入先となっており深刻な糞便汚染が推定される.採水調査を行った結果,全地点で大腸菌数が環境基準を超過し,旧市街地中央部(中央運河)において,河川と通じ外周を流れる運河(外周運河)よりもECとNH4-N濃度が高いことが明らかとなった.中央運河は上下流端で外周運河と接続しているが,水位とECの連続観測により,下流端において干潮時のEC上昇及び満潮時の低下と,中央運河の中心付近における高いECを示す汚染水塊の停滞が確認された.1次元水理水質解析によって,中央運河で汚染水塊が形成されること,下流端において干満に伴い汚染水塊と外周運河からの流入水が行き来することを再現するとともに,上流端における狭窄部の拡幅により汚染水塊の停滞が消失することを示した.