2016 年 72 巻 7 号 p. III_411-III_417
横断勾配を有する粗石魚道で実魚(ウグイ)を用いた模型実験を行い,横断勾配のない模型の粗石魚道で行った既往の研究結果と比較した.4パターンの流量で実験を行った結果,横断面内で生起する流速の値の範囲が広いことや,実魚を用いた挙動実験における遡上率から,横断勾配を有する粗石魚道の優れた点が示された.既往の研究において,魚道全断面で高流速となり遡上率が非常に低かった流量Q=22.2(l/s)でも,魚道に横断勾配を設けることで横断方向に多様な流速場が形成され,水深が小さい水際部でウグイが休息できる場所を提供することができた.しかし,水深が小さい場所でウグイの停留時間が長くなることは,外敵に捕食される危険性が増す.