土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境工学研究論文集 第53巻
次世代シーケンス解析による瀬切れ河川の水生昆虫複数種を対象とした流域内交流パターンの網羅的評価
八重樫 咲子泉 昴佑三宅 洋渡辺 幸三
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2016 年 72 巻 7 号 p. III_489-III_496

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抄録

 本研究では,一度に大量のDNA塩基配列解析を実現した次世代DNAシーケンス解析技術と,DNA配列のみを用いて由来となった種の種名を検索するDNAバーコーディングを活用し,従来は1種毎に行われていた水生昆虫の流域内交流解析を,ユスリカ科12種とカゲロウ目3種の計15種に対して,同時並行に行った.解析対象地域は瀬切れが頻発する愛媛県重信川とし,解析領域はミトコンドリアDNAのCytochrome Oxidase I領域を用いた.その結果,多くの種は瀬切れによる流域内交流への影響が小さかった一方,Baetis sp. MK-2015dとChironomus kiiensisは瀬切れによる移動分散阻害が発生していた.また,移動分散能力が低いことが予想されたユスリカ科の種は,流域内での活発な交流が行われていたことが判明した.本研究では解析対象は15種に限られたが,今後,NGS解析手法の改善およびDNAデータベースの拡充により,解析可能な種が増えると考えられる.さらにNGS解析による多数種の移動分散パターン解析技術が実現することで,生態系に配慮した河川管理へ応用されることが期待される.

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© 2016 公益社団法人 土木学会
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