2016 年 72 巻 7 号 p. III_543-III_551
本研究では,ろ過膜の洗浄後に膜内部に残留するファウリング物質を原位置で観察する手法を開発するため,BSAをモデル物質としてUF膜ろ過と膜洗浄を行い,膜に残留するBSAを共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)及び確率的光学再構築顕微鏡(STORM)を用いて観察する手法を検討した.STORMによる観察では,無標識のBSAをろ過及び洗浄後に蛍光標識した場合,洗浄薬品の影響を受けず高い蛍光を得られるが,標識後の洗浄が不十分だと誤差を生じることがわかった.CLSMでは膜表面近傍に残留するBSAを定量的に把握できるが,膜内部に残留する微量なBSAの観察には適さず,一方,STORMは定量性は低いが膜内部の微量のBSAの分布を従来より高い解像度で可視化できた.このことから,これらの顕微鏡を組み合わせた観察手法が膜表面と膜内部のファウリング現象の解析に有効であることが示された.