2017 年 73 巻 5 号 p. I_39-I_46
水需要量は地球規模気候変動の他,人口減少,世帯構成変化,節水行動の浸透,節水型機器の性能向上などといった様々な社会的要因に左右される.そのため,渇水時のダム運用を考える上で水需要を左右する様々な影響要因について個別に検討することが重要であるが,例えば世帯構成の変化による影響について解析された例は多くない.本研究では,愛媛県松山市を対象に,人口変動(人口減少+世帯構成変化)による水需要量の変化が渇水時のダム運用に及ぼす影響を明らかにするため,検針データから推計した日使用水量を基に,将来の人口変動を考慮した水需要量を推計し,将来の人口変動の影響と気候変動の影響を比較評価した.その結果,人口変動の影響と気候変動の影響がほぼ打ち消し合う結果となり,将来の渇水時のダム運用を考える上で人口変動を考慮することの必要性を示した.