抄録
地域が気候変動への緩和と適応等の環境制約とともに,高齢化への対応や社会基盤の維持といった様々な課題の克服を目指すとき,その方法の一つとして居住地・従業地を拠点へ集約するコンパクトな土地利用への転換が議論されている.本研究では数十年にわたる土地利用の将来像を特に低炭素対策の観点から検討するため,人口及び経済のマクロ的な推計と居住地および従業地の空間分布を操作的に取り扱うモデルを組み合わせ,将来空間シナリオを分析する手法を開発した.これを仮想的なモデル都市及び福島県郡山市に適用し,拠点の数と集約強度の違いに応じた地域エネルギー事業と,地域交通事業としてカーシェアリング事業の対象範囲の変化を検討した.その結果,集約拠点を減らし集約の強度を高めることでエネルギー需要密度の増加により地域エネルギー事業の対象範囲は増加するが,カーシェアリング事業については過度の集約により対象人口が減る可能性が示唆された.