2017 年 73 巻 6 号 p. II_45-II_52
住宅の高断熱化と空き家対策を両立させることを念頭に置き,新設住宅着工数を空き家率が増加しない範囲におさえる想定で,断熱性能向上による世帯あたりのエネルギー消費量の削減見込み量を推計した.建築年別の断熱性能基準適合率を踏まえた地域別建て方別の断熱性能の変化と将来世帯数の市町村別推計を踏まえた必要住宅数の2点を考慮した.多くの自治体において世帯数が急速に減少し,新設着工数が累積で10%程度にとどまる結果,新設住宅による世帯あたりエネルギー消費量の全国における削減見込みが2030年には2010年比で1%弱しか得られないおそれがあることが分かった.機器効率の改善や創エネの導入等の対策を組み合わせるとともに,既存住宅の改修や断熱性能の低い住宅からの転換を大規模かつ着実に実施することが重要である.