自然災害起因の産業事故はNatech と呼ばれ,自然災害と産業事故の間をつなぐ新しい分野として研究が進められている.本稿ではNatech 概念を紹介するとともに,前半において,Natech 文脈における,リスクとレジリエンスの概念を整理するとともに,Natech リスク評価のプロセスやスコープの拡大について概説した.後半では,重要な事故を起点として,主に専門家の認知が変化し,法規制ギャップの調査が実施され,その結果に基づき,法規制が更新される,というサイクル・モデルを紹介するとともに,戦後のNatech 規制の更新の歴史的経緯を,このモデルを念頭に置きながら,屋外石油タンク,高圧ガス施設,石油コンビナートを対象に整理した.