2017 年 73 巻 7 号 p. III_125-III_137
抗生物質の広範な使用にともない,各種排水が流れ込む水環境からの薬剤耐性菌の検出事例がしばしば報告されている。本研究では,耐性菌に感染後の治療の困難さを反映すべく,従来のリスク評価と障害調整損失年(DALY)の手法に薬物の動態や効果に関するPK/PD理論を取り入れることで,水中の耐性菌による健康影響評価手法を開発した。その手法を用いて,海や河川での水浴と水田での作業のシナリオのもと,セフェピムとシプロフロキサシンに対する耐性菌の存在を考慮した皮膚感染症の健康影響を評価した。評価に必要となる皮膚感染に関する用量反応モデルも新たに整備した。評価の結果,耐性菌の存在により多くのケースで疾病負荷が増加(最大7.7倍)すること,耐性率が高い黄色ブドウ球菌による疾病負荷が特に高いことなどが明らかとなった。