抄録
温度変化が堆積物からのホウ素とヒ素の溶出量と存在形態に及ぼす影響を解明することを目的に,荒川低地中部で深度50 mまでのボーリングにより採取した4試料を用い,嫌気的条件および異なる温度条件下(15℃,25℃,40℃)で溶出試験(水溶性を分画)を行った.溶出試験後の試料に対し,逐次抽出法試験(イオン交換態,炭酸塩態,鉄・マンガン酸化物態,有機物態,残渣に分画)を適用した.溶出試験でホウ素とヒ素の水溶性画分に温度効果が顕著であった堆積物について,水溶性,イオン交換態,炭酸塩態の量を足し合わせた最大溶出可能量は,温度上昇とともに増加する傾向が確認された.一方,鉄・マンガン酸化物態は減少傾向にあり,この画分から溶出しやすい存在形態(水溶性,イオン交換態,炭酸塩態)へと温度上昇により移行した可能性が考えられた.