土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境工学研究論文集 第55巻
原子力発電所事故後に避難指示を受けた地域における水利用と水環境の変化
高荒 智子林 聡宏芥川 一則渡部 徹
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2018 年 74 巻 7 号 p. III_357-III_365

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抄録
 A町では,原子力発電所事故の後,全町民に避難指示が出された.約1年後にそれが解除され,町民の帰還が進んでいる.同時に,復興事業の為に多くの作業員が滞在し,A町の人口は事故前に比べて約1.5倍に増えている.人口増加にともないA町の既存浄水場の配水量も増加し,処理能力の限界に近づいていた.作業員宿舎からの生活排水が周辺水環境に与える影響については,宿舎に設置された浄化槽は正常に機能しており,処理水のBODは低かった.この水質から推定した作業員宿舎からの汚濁負荷は,河川のそれに比べて無視できるほど小さかった.この例の通り,原発事故後の住民の避難は長期に及び,移動範囲も広い.これを踏まえて,上水道の広域化,作業員宿舎や仮設住宅の立地検討などの準備が肝要である.
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© 2018 公益社団法人 土木学会
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