抄録
2 つの都市下水処理場の影響を受ける仙台市の蒲生干潟において,2017年10月から2018年2月に渡り,自生する牡蠣およびイソシジミに蓄積されたノロウイルス量の分析を行った.牡蠣とイソシジミどちらも,感染性胃腸炎の流行前から体内にノロウイルスを蓄積させていた(牡蠣で中腸腺1gあたり2.2 log copies,イソシジミで2.5 log copies程度).ノロウイルスGIIの蓄積量は,感染性胃腸炎患者の増加に伴って明らかに増加していた.ここで明らかとなった牡蠣およびイソシジミのノロウイルスGII蓄積量は,干潟に近い下水処理場流入水中のウイルス量とは相関関係がなかった.一方で,仙台市の胃腸炎患者報告数との間には有意な相関が見られ,市内での感染症流行対策を行うことが,二枚貝の安全性の向上につながることが示された.