抗菌性物質は家畜に対し世界中で広く使用されている.家畜に投与された抗菌性物質の一部は糞や尿として体外に排出されるため,その排せつ物を堆肥として使用した場合,農地土壌や周辺環境へ悪影響を及ぼす恐れがある.本研究では,土壌中での抗菌性物質の挙動を明らかにするため,マクロライド系抗菌性物質であるタイロシンについて,3種類の土壌への収着動態および分解性を検討した.その結果,有機物が比較的多い黒ボク土と褐色森林土では,微生物によりタイロシンが分解する可能性が示唆された.また,灰色低地土ではどの温度条件でもタイロシンの残留率が顕著に低く,これは土壌に含まれる粘土鉱物の物理化学的な作用によることが示唆された.