本研究の目的は,環境直接支払における農家の採択行動に影響する要因を明らかにすることである.集落レベルでの採択行動には空間的な集積が認められるが,既存研究では十分に考慮されていない.本研究では空間プロビットモデルにより空間的自己相関を明示的に考慮した分析をおこなった.分析により,環境直接支払の対象である5種類の取組(IPM,緩効性肥料,有機農業,カバークロップ,炭の投入)のいずれにも正の空間的自己相関が示された.また,集落の環境条件と内部条件も採択行動に影響する要因として示された.結果より,環境直接支払のターゲティング,農業者間の情報交換の場の創成,農地集積促進による大規模農家率上昇の3点の重要性が示唆された.環境直接支払の更なる普及のため,より柔軟な支払体系や支援体制の構築が必要といえる.