2019 年 75 巻 5 号 p. I_1-I_7
2018年台風21号について再現実験と,21世紀末の気候場を仮定した擬似温暖化実験をWRFを用いて実施した.再現実験はベストトラックの進路と中心気圧をよく再現していた.擬似温暖化実験の台風の進路は再現実験とよく一致しており,中心気圧はおおむね10hPa以上の低下が確認された.両実験を比較すると,大阪府から和歌山県の沿岸のほぼ全ての領域で風速が20%以上強まった.さらに擬似温暖化実験では,京阪神でも広く風速25m/s以上の暴風が確認された.降水量も大幅に増加し,近畿地方の広い範囲で3時間降水量が再現実験の2倍を超えるような降水が確認された.また,北陸地方でも風速が強まり,沿岸部では広い領域で風速が30%以上強まった.