2019 年 75 巻 5 号 p. I_201-I_209
本研究では,一般的な死亡リスクを対象とし,理論的に整合的な統計的生命の価値(VSL)を計測するために,幸福度調査からデータを収集し,順序反応モデルを用いて幸福度関数を推定した.本研究で得られた知見は以下の通りである.(1) 相対的リスク回避度が1の場合(対数型効用関数),平均VSLは約6,912万円,一方で相対的リスク回避度が1.260の場合,平均VSLは約7億3,521万円とそれぞれ計測された.(2) 先行研究のように,年齢別のVSLは20代から50代までは増加するものの,60代で減少に転じ,VSLが逆U字型の形状を示す結果となった.(3) 子供や孫の有無,配偶者の有無,世帯人数,居住地といったさまざまな属性も,少なからずVSLに影響を及ぼすことが示唆された.