2019 年 75 巻 7 号 p. III_199-III_207
下水中の浮遊物質は有機物を含むエネルギー源であり,最初沈殿池でのこれらの除去をエネルギー回収ととらえた場合, 粒径別発熱量分布が重要となる.本研究では下水処理場2か所にて, 最初沈殿池廻りの試料に対して粒子分画を行い,粒径分布,粒径別元素分布に加え,熱重量・示差熱分析を応用し,粒径別発熱量分布を明らかにするとともに,最初沈殿池におけるエネルギー回収率を算出した.
結果,最初沈殿池にて250μm以上の粒子は9割以上回収されることが確認できた.粒径別発熱量分布は,小粒径画分ほど発熱量が高くなる傾向を示したが,強熱減量の傾向と逆であり,トイレットペーパーなど高酸素含有物の影響が窺えた.最初沈殿池でのエネルギー回収率は各々87%, 74%と算出されたが,この値には粒径別発熱量分布よりも粒径分布そのものの影響が支配的であった.