2019 年 75 巻 7 号 p. III_367-III_374
アオコの原因となる藍藻は,消費者から餌利用されにくいと考えられているが,実際の富栄養湖における消費者のアオコ餌利用の実態は不明な点が多い.そこで,毎年アオコが発生する富栄養湖である秋田県八郎湖において,ゾウミジンコ(Bosmina longirostris),オナガミジンコ(Diaphanosoma brachyurum)およびカイアシ類成体を対象に,脂肪酸分析を用いて藍藻が餌として同化されているか検証した.夏季のアオコ発生時期において藍藻に多く含まれる脂肪酸である18:2ω6および18:3ω3の含有率の増加がゾウミジンコとカイアシ類成体で確認され,アオコを餌として同化していることが明らかになった.八郎湖で優占するゾウミジンコは分析した甲殻類の中で最も高い藍藻由来脂肪酸の含有率を示し,湖沼食物網における上位消費者への藍藻由来有機物の移行に重要な役割を担っていると考えられた.