2019 年 75 巻 7 号 p. III_403-III_412
各戸導入型小型水供給設備は過疎地域において有効な選択肢となりうるが、設備利用における健康リスク管理の徹底が必要である。本研究では水安全計画に基づき、設備利用者の健康を保障する管理基準の同定を試みた。Legionella pneumophilaが処理水貯水槽に侵入する場合を想定した定量的微生物リスク評価により、遊離塩素濃度を0.5mg/Lとした際の疾病負荷は、世界保健機関による許容値10-6損失DALYpppy以下まで低減されると推定された。貯水槽にAcanthamoebaが侵入する場合、遊離塩素濃度を2.5mg/Lと設定すると約80日間許容感染リスク以下に保たれた。以上より、重要管理点の管理基準として初期遊離塩素濃度2.5mg/Lの確保及び2ヶ月おきの膜交換により設備使用時の健康リスク管理が可能となる。