土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
地球環境研究論文集 第28巻
世界を対象とした対流圏オゾンの作物収量に対する影響と気候政策の副次的便益に関する研究
渡邉 諒一藤森 真一郎長谷川 知子大城 賢
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2020 年 76 巻 5 号 p. I_129-I_140

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抄録

 大気汚染物質から生じる対流圏オゾンは,温室効果ガス排出に伴う気候変動とともに作物の収量に影響を及ぼすことが注目されている.本研究では気候緩和策の実施条件が異なるシナリオ下で推計された将来の対流圏オゾン濃度分布を用いて,対流圏オゾンが作物収量に与える影響を推計した.その結果,強い緩和策は対流圏オゾン濃度減少を通じて将来的に作物収量を全世界で1%程度改善させるが,排出削減による気候変動影響の軽減効果と比較すると3割程度と副次的な便益としては限定的であることがわかった.しかし,中東・北アフリカ・アジアでは世界平均よりも約4倍大きな収量改善効果が強い緩和策で見られ,対流圏オゾンによる局地的な収量減少を回避しうることから,世界全域の安定的な発展には重要であることが示唆された.

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© 2020 公益社団法人 土木学会
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