2020 年 76 巻 5 号 p. I_311-I_318
洪水氾濫や高潮等の水災害のリスクの高まりが指摘されるなか,沿岸域の浸水被害を定量的に予測することは,適応策を構築する上で重要となる.全球を視野に入れた場合,一律なデータ生成基準に基づく堤防データは公開されていない.このため,著者らは既往の研究において東京湾および伊勢湾を対象とした全球堤防データの適用事例を報告したが,その考察は堤防高さを変化させたシミュレーション効果を主とした検証に留まっていた.本研究では,浸水履歴や高潮影響域等浸水評価図および既往の研究で示された浸水面積や影響人口のデータを比較対象として,本研究で提案した全球堤防データを用いた浸水域の推定結果の妥当性を検証するとともに,ベトナムおよび中国沿岸域の浸水域を対象として,影響を受ける人口や土地利用の特徴を検討し,浸水域の持つ特徴を整理した.