2020 年 76 巻 5 号 p. I_353-I_359
太平洋の低平な環礁国では,グローバルな要因に加えて,生活排水等のローカルな要因により,国土の形成・維持機構が破壊されつつある.本研究では下水管に排水処理と創エネの機能を付加し,現地のサンゴ礁生態系の保全・再生に寄与する手法を開発することを目的とした.下水管の流下方向にアノードを設置し,塩酸からカソードにプロトンを供給する構造とした.実験室規模の下水管型MFCを運転したところ,有機物除去速度は8.0 mg-C L−1d−1,発電性能は94 mWm−2を示した.ただし,装置全体の内部抵抗が1.7kΩと高く,排水とアノードの内部抵抗の改善が出力向上の鍵となることがわかった.マーシャル諸島マジュロ環礁における既存の総延長14 kmの下水管に本手法を適用した場合,本装置と同様の性能を発揮すると仮定すると,流下する生活排水中の有機物の25%を除去でき,4.7 kWh d−1の発電量が見込まれる試算となった.