2020 年 76 巻 5 号 p. I_461-I_470
本研究では,気候変動が国民生活・都市生活に与える影響をアウトカムの視点から統合的に評価するための枠組みの検討を行った.既存の国民生活・都市生活に関連する指標を整理し,気候変動との関係性に基づき,気候変動との関連が深いと考えらえるQOL要素を選定したうえでCC-QOL(Climate Change related Quality of Life)指標として定義した.その上で,アンケート調査を実施し,要素指標への市民の価値観をコンジョイント分析により分析した.その結果,各構成要素に対する価値観の重みが推計されるともに,農林漁業従事者は自然環境や気候関連に対する重みが大きい傾向があること等,個人属性ごとの特徴が示された.さらに,全国を対象として現状における市区町村単位のCC-QOLの統合値を推計したところ,現状では暑熱や洪水リスクなど様々なリスクが高い西日本の方が,東日本より評価値が低い傾向にあること等が明らかになった.