2020 年 76 巻 6 号 p. II_237-II_247
本研究は,暑熱分野における気候変動適応策・技術の全国展開について今後の見通しを得ることを目的とし,「ドライミスト」を対象に,文献調査と聞き取り調査により,多くの地域で導入・普及した要因の事例分析を行った.主な結果として第1に,背景課題を満たす技術的要因の出現があった上で,特に経済的要因,制度的要因,社会的要因,組織的要因の果たす役割が大きい.第2に,技術の社会実装が進むにしたがって,「人が多い場所での暑熱対策」から「人やモノの価値を高めるための対策」へと技術の持つ役割,価値の変遷も明らかとなった.法により各地で設置が進む地域気候変動適応センターが,政策移転ネットワークのハブとして機能するよう,こういった知見を蓄積していくことが求められる.