2020 年 76 巻 6 号 p. II_35-II_46
本研究では行政主導型で家畜ふん尿のバイオガスプラント(BGP)を導入した北海道興部町と北海道上士幌町を対象に,BGPの導入が酪農地域全体に与える効果を酪農家と行政の視点から明らかにし,BGPの価値を示すことを目的とした.その結果,BGPの導入により酪農地域に与える効果の全体像を定性的に図示し,以下のことが明らかとなった.酪農家の視点からは,課題であった悪臭の改善や牧草の質・量の向上,また搾乳量の増加に寄与することが明らかとなった.さらにふん尿処理のアウトソーシング化による余暇の創出といった効果も明らかになった.行政の視点からは,雇用の増加や視察人数の増加,環境教育などの項目と関連しており,当初行政が想定していた項目(エネルギーと環境分野)より広い項目に効果が及んでいることが明らかになった.