2021 年 77 巻 2 号 p. 60-71
本研究では,河川流域の土地利用等の指標と,河川の水質汚濁や下水道整備による水質改善との関連を明らかにするため,国内の101河川流域を,森林,農地および市街地面積に基づいた土地利用指標により,4つの河川流域類型に分類した.全国的には,森林や農地面積比率が高い類型に属する多数の河川流域では高度成長期にも深刻な汚濁は見られなかったが,市街地面積比率が高い類型に属する河川流域ほど水質汚濁が深刻化した.しかし,同じ類型に属する河川流域でも,人口密度が高く低水流量あたりの流域面積を表す低水比面積が大きい河川ほど,汚濁が進みやすいことが明らかになった.一方,農地と市街地を合わせた開発可能面積比率が高い河川流域に比べ,森林面積比率が高い河川流域ほど下水道整備が進みやすく,それによる水質改善効果が顕著であった.