2021 年 77 巻 2 号 p. 49-59
管路老朽化に伴い漏水事故の増加が懸念される中,事故対応を迅速化する方策が重要性を増している.配水流量の監視による漏水事故発生の判定手法が提案されてきたが,緩やかに増加する漏水事故を速やかに判定する手法は確立されていない.本研究では,予測ラグの異なる複数の配水流量予測モデルを併用することで,緩やかに増加する漏水を含む多様な漏水事故を早期判定する監視手法を提案する.小規模配水区域を対象に,様々な規模,増加の緩急,発生時刻の漏水事故発生を模擬するデータを生成して提案手法を適用した.単独の予測モデルに基づく手法と比べて,提案手法は漏水事故発生の判定見落としを低減するとともに,本研究の適用区域では判定に要する時間を1‒2時間程度短縮する効果が見込まれた.対応を早めて被害低減に貢献できる可能性がある.