2021 年 77 巻 5 号 p. I_133-I_138
太平洋の低平な環礁国では,生活排水等により沿岸生態系が劣化し国土維持機構が破壊されつつあるため,水没の危機が加速化している.そのため,環礁における主要な砂生産者である底生有孔虫に着目し,水質汚濁に対する知見を得ることは重要になる.本研究では,マジュロ環礁の都市域沿岸の水質汚濁を想定して,底生有孔虫Baculogypsina sphaerulataに1,000倍,10,000倍に希釈した都市下水を8日間曝露した.そして,パルス振幅変調を用いて光化学系IIの有効量子収率Y(II),最大量子収率Fv/Fm,クロロフィルa含有量,過酸化脂質LPOをそれぞれ調べた.共生藻類の指標となるY(II)は,いずれの希釈倍率でも実験開始後すぐに低下した.宿主の酸化ダメージの指標となるLPOは,1,000倍希釈のとき上昇した.つまり,1,000倍希釈では宿主と共生藻類が,10,000倍希釈では共生藻類が負の影響を受けることがわかった.以上のことから,マジュロ環礁の都市域沿岸は,B. sphaerulataが生息しにくい環境であることが示された.