2021 年 77 巻 5 号 p. I_125-I_131
損害保険会社にとって自社が保有する洪水リスクの定量的な評価は重要な課題であるが,特定の国・地域では情報や知見が十分に蓄積されておらず,自然災害モデルが存在しないという課題がある.
本研究では損害保険会社が日本や欧米等における自然災害リスクの分析に用いている従来の工学的モデルのハザードモジュールに代わって,降雨データ等の既存の情報から洪水リスクを定量的に評価するための手法をインドネシアのジャワ島を例に提案する.まずGSMaPからRRIモデルにより河川流量を計算する.次に条件付き確率モデルであるHeffernan-Tawnモデルで構築した多地点間の極値での依存関係から流量の同時超過確率を算出するとともに,一例を可視化して確率的洪水イベントの地理的相関が表現されていることを確認する.