2021 年 77 巻 5 号 p. I_167-I_175
地表面付近に存在する対流圏オゾンは酸化力が強く、その化学的性質は植物に悪影響を及ぼし、特に食料供給という観点からは作物収量の損失が問題視されている。本稿では、世界を対象に気候変動とその緩和策に伴うオゾン濃度の変化が、作物収量変化を通じて食料消費や飢餓リスク人口に及ぼす影響を明らかにした。結果として、強い気候変動対策を実施した場合において気候変動なし・緩和策なしの場合と比較して、世界全体で飢餓リスク人口は気候変動影響により約980万人増加する一方、オゾン濃度軽減により約550万人減少し、実質約380万人の増加となった。オゾン濃度軽減による飢餓リスク人口の減少は現在も深刻な飢餓に直面している地域であるインド、その他アジアなどで大きくみられた。この副次的便益は途上国を中心に気候変動対策の導入へのインセンティブになるといえる。