2021 年 77 巻 5 号 p. I_183-I_189
パリ協定で設定された2℃目標の達成には大規模な再生可能エネルギーの導入が必要とされている。しかし、既存研究の再生可能エネルギーの潜在生産量の計算は土地利用を現状と将来も同じと仮定したものがほとんどであった。そこで本研究では、現在から2100年までの土地利用変化を考慮した世界における風力・太陽光エネルギーポテンシャルを推計した。その結果、気候緩和策を取らず、中庸な社会経済状況におけるなりゆきシナリオ(SSP2_BaU)のときは、2050年の技術的ポテンシャルは風力で623EJ/年、太陽光(未利用地)で12,685EJ/年、太陽光(都市)で196EJ/年であり、現状の土地利用を将来に想定した場合と比べてそれぞれ3.4%、9.0%減少した。地域別では、風力・太陽光ともにアフリカでのポテンシャルが最も高く、SSP2_BaUのとき、2050年ではそれぞれ234EJ/年、6,265EJ/年であり、現状の土地利用を将来に想定した場合と比べてそれぞれ11.1%、17.1%減少した。研究の結果は将来の統合評価モデルのシナリオにおいて、再生可能エネルギーポテンシャルに土地利用を考慮する必要があることを示唆している。